徒然畑

徒然なるままに。

映画「君の名は。」を見てきて「すばらしい!」と思った3つの点 【その2】

日本とアニメの変化から生まれた新機軸ーー-ここ最近のアニメの傾向が幅広く受け入れられた瞬間

次は時代の変化と照らし合わせたすばらしさの点から。

 

この映画、見ていてとても「今のアニメっぽいなあ」と思ったんです。

私は周りからいくら否定してもオタクやと言われるので感覚がオタクよりだと信じた上で言いますけど

純粋に「今のアニメっぽいなあ」と思わせるのにオタクじゃない人たちにも評価されているのが

変化だなあしみじみ感じた一本でした。

 

今のアニメっぽさ、というのがどういうことなのかということについて

自分の中で考えている中で

こちらの評論が読んでいて一番腑に落ちたのでちょと紹介します。

 

realsound.jp

 

上記の記事から抽出していくと、今のアニメらしさを思わせるのは以下の点。

 

 ◆オタク的シナリオゲームに見られる複数世界の可能性

簡単に言うと、いわゆるギャルゲーやエロゲーと呼ばれる

美少女系ゲームに見られる「分岐システム」を物語にうまく取り入れています。

美少女ゲームは基本、プレイヤー自身がゲームの主人公になりきり、

様々な恋人候補の女性キャラクターとどのような会話を交わすか、どのように接するかを選択(分岐)することで

キャラクターの好感度や新密度が上下し、物語の展開や結末が様々に変化するシステムとなっています。

本作のシナリオはそのシステムをうまく応用しており、

そういった物語の展開や結末を、主人公であるプレイヤー側が意識的に変化させることができるという視点を活かして

初めは三葉と現実には出会うことができずに終わってしまう運命を

糸守の御神体というキーポイント(ゲーム的にはセーブポイントと言うべきですかね?ちょっと違うかも…)をを駆使して変えようとする瀧の姿を描写しています。

 

◆エロスやフェチズムを想起させる表現

たとえば一番衝撃的だった「口噛み酒」に始まり、

物語の序盤で三葉が想起する「口噛み酒」のグラビアビジュアル、

そして、三葉の寝相姿をあえて生々しいアングルで描写する姿勢。

(パジャマから見える生脚や息遣いに呼応して揺れる肢体等。

瀧の寝相は結構あっさり描いていたのに対して、彼女の寝相は丹念に描写しているのがなーんか印象的でした…)

そういった決してファミリー向けには表象されないような

人間の内なる欲望やアンダーグラウンド的な表現が、ちらりほらりと忍ばされています。

 

そういった点からも、

君の名は。』がジブリ作品やドラえもんポケモンルパン三世などの

いわゆる国民的アニメ部類に完全に含まれる作品か、と言われると

これまでの流れから考えると含まれないといえるのです。

ストーリーの筋道、所々に見られるキワドイ表現、

そしてここ数年の美少女ゲーム的シナリオに見られるようなギミックは

まどマギSTEINS;GATEなど思い浮かべると符合すると思います)

これまでは国民的アニメの枠組みというよりかは

たとえばコミケや同人ゲーム、深夜放送されるニッチなアニメのような枠組みに

分類されるのが今までの流れでした。

 

ただ昨今の急激に日本国内でのアニメへの評価の高まりや

オタク文化の注目度の向上(これについては賛否両論様々ありますが)の流れも手伝い

そういったオタク的アニメ文化は、徐々に普遍的な社会へ融和していく傾向にありました。

例えばコンテンツ面からいうと

ニコニコ動画を起点としたボカロ音楽などの普及、

ライトノベルの浸透、

細田守作品、「あの花」、「まどマギ」などのアニメ作品のヒットなども

その変化の一旦ととらえてよいともいえます。

 

これまでのオタクらしいギミックを活かしつつも、

キャラクターの「リア充化」(現代のオタクではない普遍的な若者像化)や有名俳優の声優や若者に人気のアーティストの起用、

そして観客のフィクションに求める夢や希望(いわゆるハッピーエンド)を認識したうえでの

エンターテイメント的コンテンツとしての脚本設定等のアレンジを加えたことで

これまでの国民的アニメやオタク的アニメのちょうどいいところをとった立ち位置をこの作品が築き上げたことが、

君の名は。』の大きな功績の一つだと感じます。

 

ちょっと前まではオタクって言うだけで侮蔑的にとらえる風潮すらあったのに

そういう時代をも見てきた人たちにとっては「そんなに売れたの?」という感想を抱かざるを得ないかもしれないですね。

そういう意味でも、時代の変化、日本アニメの進化の表象として『君の名は。』はとらえることができるのです。

 

大学時代にアニメ論という講義を好き好んで受けていたことがあったので

この手の話の観点から『君の名は。』のすばらしさを見出してみました。

今までのコンテンツや文脈、時代背景等を考慮したうえで作品見ていくのって楽しいですねえ。

 

あともう一つは…やっぱり文字数長くなりそうなのでこちらもまた明日以降に。