徒然畑

徒然なるままに。

映画「君の名は。」を見てきて「すばらしい!」と思った3つの点 【その1】

今日は早く帰るんだ!と思っていた日に限って

早く帰れない何事かが起きてしまうのはなんでなんでしょうね…

突発の仕事で思ったよりも残業したことでました疲労を抱えながらも…金曜日に行ってきました…今話題のアニメ映画…

 

youtu.be

新海誠監督の新作、「君の名は。

 

私が新海監督を知ったのは、

一時期TUTAYAでアニメDVDを怒涛のように借りまくっていた時期に(今でもたまにやりますが)であった「言の葉の庭」です。

見た瞬間に「なんだこの素晴らしい才能は…」とほれぼれし、

Z会のCMや建設会社のCMでも彼のアニメーションが用いられるようになって

時代は変わったなーとしみじみ感じていた矢先に、耳にした彼の新作。

ちょっと最近アニメ映画見れてなかったなあ…と思ったので見に行ってみたら。

 

なんかすごかった。

そしてしこたますばらしかった。

 

何がしこたま素晴らしかったかは後述でじっくり語りますが、

何がすごいって、公開一週間以上たっているはずなのに、人、人、人…

ちょうど公開一週間たつか経たないかの頃に実家がある福岡に帰省していたんですが

その際に外に出た時間つぶしに「君の名は。」見に行こう~と思って当日の席照会したら、当日券は基本満席。

金曜日だって、前日にネット予約で席確保していたから見に行けたようなもので

当日行ってみると「満席」の文字が…

『…あれ、アニメ映画ってこんなに人気出るもんなの?』

とまあ周りからオタク呼ばわりされる私は純粋に疑問と戸惑いを抱えて映画を見に行ってきたわけですよ。

 

で感想。

すばらしかった。

物語的な意味でも。

そして、時代の変化的な意味でも、

マーケティングスタンス的な意味でも。

 

昨日見てきたばかりでまだ感動の熱がひかない脳みそでこれを書くのは

主観的になりそうでちょっとチャレンジングなのですが

私の特技は物忘れの早さなので、今回見てきた「君の名は。」にみいだしさ三つのすばらしさについて書き残そうと思います。

 

下手したらこれ数日分になるかもな。

よし、書くか。

※ネタバレするんで見ていない人は読まないことをお勧めします。

 

 圧倒的「愛おしいもどかしさと切なさ」を生んだ、より人の心に寄り添うものと、より人の心を抉るものの存在

まずは物語的すばらしさの点から。
映画のヴィジュアルからもあらすじとかからもこれは二人の恋物語なんだーというのは見る前に予想がつくことはできるでしょうが、
ふたを開けてみたら「監督は多分確実にドS!!」と思うほど
圧倒的「愛おしいもどかしさと切なさ」 がつまった恋物語
 
どういった点が切なくもどかしいのか。
まず一つ、二人は決して出会わずに絆を深めていく点。
そして二つ、二人の生きている時代がそもそも違っている点。
最後三つ、二人のお互いに共有した記憶が消えて行ってしまう点。
 
こんな三つの障害が次々に降りかかってくる二人を見ていると
観客は近所の世話好きなおじさんおばさんの気分に駆られて仕方なくなるのです。
本人たちは最終的には漠然としたもやもやを抱えながら別々の場所で別々の時間を過ごしているのですが
観客側としてはこれまで二人がどういうやりとりをしてきたかが痛いくらいわかっているので
最後のシーンまではずっと二人以上に切ない気持ちに体中締め上げられるのです。
何て拷問。
だからこそ最後の展開5分間はどっと涙腺崩壊によるいろんなものがこみあげてきてしまうので
見終わった後「乗り切ったぞ…瀧も三葉もそして私もこの幾多の難所を乗り切ったぞ…!」という気持ちになるんです。
 
まあ観客の心境的な話はこれくらいにしておいて。
冷静に考えると、ストーリー的には
 ①出会い
 ②絆の芽生え
 ③絆を引き裂く危機
 ④絆の強化
 ⑤絆を引き裂くさらなる危機
 ⑥絆の絶対的強化(HAPPYEND!)
という展開になっていますが、
過去にこういったストーリー展開で人々を感動させ、ヒットを生んだ例は実際に実在するので、ヒットの基盤はこの映画は持っていたんだなと納得できます。
 
例を挙げると、当初アニメの製作元でさえ売れると思ってなかったという
TIGER & BUNNY」の虎徹とバーナビーコンビ。
実際に上のサイクルに話を当てはめてみると
 ①出会い(1、2話)
 ②絆の芽生え(3~9話)
 ③絆を引き裂く危機(10~12話)
 ④絆の強化(13話)
 ⑤絆を引き裂くさらなる危機(16話~24話)
 ⑥絆の絶対的強化(HAPPYEND!)(25話)
という風な筋道をたどった末に、お互いの絆を確固たるものにしています。
 
一般的なストーリー理論的には、二人の絆や愛情を育む系ストーリーには
「障害(絆を引き裂くようなアクシデント)」と
「小道具(登場人物に絆を深めるor助けるキーとなるもの)」が必要です。
なので問題はその小道具や障害をどういったものにして構成していくかが、
脚本を作る人の腕前にかかってくるのですが
新海監督はその障害や小道具の選び方、
それを選んだうえでの物語設定がとてもうまかった点が今回拍手をたくさん送りたいポイントです。
 
どうして選び方がうまいと思ったのか?
①「言葉」だけが二人をつなぐ鍵
基本的に二人の絆には「言葉の存在が欠かせません。
たとえば、瀧の持つダイアリーアプリ上の近況報告や
不満が爆発したために体に書いた罵倒や
ノート上に書かれた疑問、不満。
そして、後半でお互いの手に書き記した、記憶消失にあらがうための文字。
この映画では様々な種類の媒体を利用して互いの思いをぶつけあっています。
直接話すことも、触れ合うこともできない二人だからこそ
様々な種類の「言葉」だけが、二人をつなぐキーと言うところに
親密さと切なさを余計に感じてしまうのです。
 
②「時の隔たり」と「記憶の消失」という抗いがたい障害
この映画の冒頭だけ見ていると、この二人の障害は「距離の隔たり」だけなのでは?と思ってしまいますが
実際はこの二つが二人にとって大きな障害になっています。
「時の隔たり」では、生きる時代が違うという設定だけでなく
片方はもうすでに死んでいた、と言う設定のダブルパンチで衝撃を与えます。※
それでもあきらめずに互いに相手に出会うため奔走しますが、
さらに立ちふさがるのは「記憶の消失」
「記憶の消失」 では、「時の隔たり」よりもさらに厄介な障害と言うところがミソで
彼らの頭の中の記憶だけではなく、彼らの絆をつなぐキーである言葉さえも消失していくという設定が
見ている人に運命の辛辣さを感じさせてしまうのです。
 
※もちろん、この「衝撃的だった!」という感想を観客に抱かせるのは
この映画の宣伝担当の方の「どのような情報を事前に与えたら人々はより物語に引き込まれるか?」をよくわかった上でプランを汲んだ手腕によるところも、十分あります。
 
要約すると、新海監督は物語を組み立てる上で
小道具はより人の心に寄り添うものを、衝撃はより人の心を抉るものを、というチョイス・設定を行った結果
観客に「愛おしいもどかしさと切なさ」 を感じさせる作品となっているのです。
 
 
ちなみに。
物語のすばらしさについては、瀧くん役を務めた神木龍之介さんもいい感じに熱弁してくれてますので
こちらも参考に。

緊急決定!『君の名は。』特番+『秒速5センチメートル』本編 - LINE LIVE

 

この特番2016年9月17日配信までらしいので要約すると

「新海監督の得意とする『距離感の切なさ』が『君の名は。』でも爆発している!」

もし『君の名は。』を見てこの新海節がすき…!と思った方は

過去の新海監督作品を見ることをおすすめします。

そして私も見ます(真顔)

※ちなみにこの配信「秒速5センチメートル」も見れるというお得な映像ですよ奥さん

※ところでこれ見て神木さんガチで新海さん作品好きなんだなとひしひし伝わってきましたよ…その愛情素敵です…

 

ちなみに私が個人的にぐぐぐっときたのは

一番最後のシーンですね…

いやもういろんなシーン心に残っているから一つに絞るの難しかったんだけど

最後のシーンのあの間は、ためらいの間は、とても日本美だと思ったんですよ。

一言でいうと奥ゆかしい。

 記憶がはっきりとしないからこそ、心に湧き上がる喜びと

自分の妄言だったらどうしよう、関係ない人だったらどうしよう、という疑心暗鬼さのはざまで揺れる二人の姿を見て

個々が一番奥行きがあるところに感じてしまって仕方なかったんです。

出会ってすぐぬか喜びできないだけの障害を体験した後の二人だからどうしても奥ゆかしく感じてしまいました…今思い出しても震える。

 

気付いたら3500文字近く行ってたので我ながら震えました。

予想通りではありますが、残りの素晴らしさについては明日以降つづろうと思います…お粗末様でした。