【No17】星野道夫 「Michio's Northern Dreams」
オーロラの彼方へ―Michio’s Northern Dreams〈1〉 (Michio’s Northern Dreams 1)
- 作者: 星野道夫
- 出版社/メーカー: PHPエディターズグループ
- 発売日: 2001/11
- メディア: 単行本
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中学生のときに国語の教科書、英語の教科書それぞれで出会うという
うちの学校の謎の教科書選定基準によって彼の写真を知ったのが始まりでした。
それから5、6年たったのちに、PHP文庫から出版されている写真集シリーズを見かけて
6巻全部買ったのは、まだ記憶に新しいです。
アラスカの自然を写真に収め続けた星野道夫さん。
海外の有名な写真雑誌National Geographic等に取り上げられたり、
日本国内のみならず海外でも彼の写真集が出版されるなど
写真界では有名な方です。
あまり私は、風景写真や自然、動物の写真などはあまり見ないのですが。。。
この写真集だけは今でもすきでちょくちょく見返しています。
今回はこの本の表現の魅力について分析します。
⑴私たちの知らない、動物や自然の「生きた」姿
彼のアラスカの動物や風景写真は、とても「生きた自然」なのです。
都会で暮らし、動物といえば動物園でしか見たことない、
自然といえば公園の木々くらいしか思い浮かばない。。。という人たちにとっては
「動物ってこんな表情するの?」と思わせるような動物たちの姿がたくさん。
ひとえに、星野さんのアラスカへの愛情故にこう言った写真が撮れるのではないかなあと感じてます。
最初は何度も取材を行って、そのうちアラスカに住み着いてしまうくらいに
アラスカの魅力にとりつかれた星野さん。
その愛情と、彼の感性から切り取られる情景は
私たちが気づけない、知ることのできない自然や動物の素顔を、見せてくれます。
⑵写真だけではない。叙情詩的な彼のアラスカの記録
そして彼の写真集の魅力は、それだけではありません。
というか、私が惚れ込んだ理由の大元であるのは、写真ではないといっても過言ではなかったりw
彼の感性が惜しみなく発揮された、アラスカの風景を記録した文章。
ただアラスカの風景を物語るだけではなく、
アラスカの自然の雄大さが、私たちの生きている日常の中でどう繋がっているか。
私たちの人生の中で、自然とどういうつながりがあるのか。
私たちが人間であることと、アラスカの自然は、どういう共通項があるのか…
彼の哲学的、または叙情的とも言える文章は、胸にずーんと響き渡ります。
星野さんの自然の中に人間を見出す目、また人間の中に自然を見出す目は
彼の文章の中によく現れているのです。
⑶写真と文章の相乗効果で見えてくる世界
そしてこの二つが同居していることで、読者に未知の体験を与えているとも言えます。
ただ写真を見ただけでは、きれい、壮大だ、という一言の感想だけで終わってしまいそうなところを
彼の綴る叙情的文章によって、その写真の見る角度が変わる。
ただ文章を見ただけでは、描写力に優れた人だなあ、という一言の感想だけで終わってしまいそうなところ
彼の撮る写真によって、彼の言葉の説得力が増し、言わんとしていることの意味が伝わってくる。
この写真集の表現力の強さは、
論理的な感動(=文章)と感情的な感動(=写真)の両方を同時に味わえることで裏付けられているのです。
おまけに、文章があることによって、
写真に疎い人でも、その写真のどこに着目すればいいかがわかり、写真にとっつきやすくなります。
写真とは別の話になってしまいますが、
以前博多に行った際に大宮エリーさんの星をテーマにした展覧会が開催されていたことがあるのですが、
あれも、文章の力によってより強い表現力を得ていた一例です。
展示物の合間に伝う星の物語を綴った文章によって、彼女の表現しようとした世界観に説得力が増していたのです。
もちろん、大前提にはそれぞれの技術の高さが必要となってきますが、
異なる二つの表現手法を用いることによって、作品の魅力を増すことができる。
星野さんには写真だけではなくアラスカを綴る文章力の高さがあったため
あえてその二つの力を同居させることで、
写真集にとどまらない力強さを発揮できたのだと思います。
もとが自然写真をたくさん見てこなかった人間なので
彼の写真が他と比べてなにが特出しているか、という点で分析できてないのが一つ課題なのですが。。。
ただ、「どうしてこういう本になったのだろう。。。」という構成の謎は、解き明かせたかなと。
読むだけで普段の生活とは違う世界を体験することができる本は
自分にとってはとてもありがたいものだと思うので、
この6冊の本も長く大切にしておきたい6冊であります。